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ボクシング界の奇跡、マニー・パッキャオ選手の6階級制覇を解説

2017 5/8 19:55SOL
ボクシング
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Photo by catwalker / Shutterstock.com

ボクシング史に残る奇跡の一つに挙げられるのが、フィリピン出身のマニー・パッキャオ選手が現役のうちに達成した「メジャー団体における6階級制覇」だ。本稿では数々の絶対王者をマットに沈めて成し遂げた偉業のディテールに迫る。

2年半で2階級制覇を達成してスピード出世

マニー・パッキャオ選手は1978年生まれ、フィリピン出身のプロボクサー。1995年のプロデビュー以来、今も現役としてリングに上がり続けており、獲得したタイトル数だけでなくそのキャリアの長さからもボクシング史に名を残すレジェンドの一人だ。
初タイトル獲得は1998年12月で現役27戦目。チャチャイ選手(タイ)を破ってのWBC世界フライ級王座だった。1度の防衛を決めた後の試合で敗れ、次のステップに選んだのは3階級上のスーパーバンタム級。
2001年ラスベガスのMGMグランドアリーナで、IBF同級チャンピオンのレドワバ選手(南アフリカ)に挑戦し、3度のダウンを奪うなど圧倒する形で6回TKO勝ちを奪い、2階級制覇を達成する。

足掛け3年でようやく達成、メキシコ勢を次々に倒し3階級制覇!

スーパーバンタム級を4度防衛したパッキャオ選手の次の狙いはフェザー級だった。2003年11月に下馬評を覆すファイトを見せてマルコ・アントニオ・バレラ選手を破り、世界にパッキャオ選手の名を知らしめる勝利を奪う。ところが次に行われた当時のWBA/IBF統一王者ファン・マヌエル・マルケス選手との一戦は痛み分けのドロー決着。王座獲得に失敗してしまう。
次なるターゲットはスーパーフェザー級。2005年9月にヘクトール・ベラスケス選手とのWBC同級インターナショナル王座決定戦に臨み、見事10回TKO勝ちでインターナショナル王座を獲得。その後もエリック・モラレス選手などメキシコ勢を撃破し連続防衛を達成する。
そして2008年3月、WBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチで再びマルケス選手と対戦。1度は苦杯を舐めさせられた相手を判定で辛くも倒し、悲願の3階級制覇を達成したのだった。

ライト級とウェルター級をスピード制覇

パッキャオ選手は早くも次のステージであるライト級に照準を絞る。2008年6月、WBC世界ライト級王者のデビット・ディアス選手(アメリカ)と対戦。立ち上がりから王者を圧倒するボクシングを見せて9回KOで勝利を収め、あっさりと4階級制覇を達成する。3階級制覇からわずか3ヶ月での出来事だった。
2009年はウェルター級にチャレンジ。5月にIBOスーパーライト級王者のリッキー・ハットン選手(イギリス)を2ラウンドでマットに沈め土台を作ると、6ヶ月後の11月にWBO世界ウェルター級王者のミゲール・コット選手(プエルトリコ)に挑戦。
コット選手の堅守を破る力がパッキャオ選手にあるのかに注目が集まっていたが、ここでも前評判を覆し、最終12ラウンドでノックアウトを奪い勝利。ついに5階級制覇を達成する。

スーパーウェルター級を制して6階級制覇を達成

アジア人ボクサーとして初となる5階級制覇を達成したパッキャオ選手は、母国フィリピンで下院議員選挙に当選。政治家とボクサーという異例の「二足の草鞋」生活を送るようになる。
そして、2010年11月、アントニオ・マルガリート選手(メキシコ)とWBC世界スーパーウェルター級王座決定戦に臨んだのだった。体格で大きく劣るパッキャオが不利になるとの予想だったが、またしてもいい意味で予想を裏切る動きを見せる。試合開始からスピードを生かしてパンチを撃ち込み続けて圧倒。ノックアウトこそ奪えなかったものの大差で判定勝ちを収めて6階級制覇を達成したのだった。

予想の斜め上をいく「圧倒的な強さ」はボクシング史上最強

同じく6階級を制覇したオスカー・デラホーヤ選手との違いは、パッキャオ選手の方が複数階級王者を倒してきたこと(バレラ選手は3階級、モラレス選手とマルケス選手は4階級王者)、そしてタイトルを獲得した階級の幅が大きいことにある。
ベテランと言える年齢に差し掛かったこともありパワーの衰えこそ見られるが、有効打を積み重ねていくことで「試合巧者」としての一面も見せるようになった。
また、2015年に行われたメイウェザーとの世紀の一戦ではケガが響き敗戦、WBA/WBC/WBO王座統一とはならなかった。その後ティモシー・ブラッドリーとの試合を最後に引退を表明したものの、2016年11月に現役に復帰、WBO世界ウェルター級王者のジェシー・バルガスと対戦した。
ここでも老獪なボクシングを見せて3-0の判定勝ち、同級王座を再び手中に収めた。2017年4月に防衛戦が予定されている。

まとめ

アメリカを主戦場として戦い、名だたるボクサーを相手に次々に勝利を奪ってきたパッキャオ選手。劣勢や逆境なんて気にもせず、遺憾なくその実力を発揮してきた。その結果得たのが6階級制覇というボクシング界における奇跡だったのだ。40歳を前に、さらに勝利を重ねようとする彼の今後にも期待したいところだ。