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【Bリーグ】横浜・生原秀将が求めた「練習の質」体制変更をきっかけに中身も充実

バスケットボールBリーグ横浜ビー・コルセアーズⒸマンティー・チダ
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Ⓒマンティー・チダ

また起こってしまった指揮官の交代劇

ブースターにとっては「またか」と思う事態が起こってしまった。横浜は、1月15日にトム・ウィスマンHCが欠場し、ACだった福田将吾氏がHC代行として指揮をすることに。後に1月31日をもって、ウィスマンHC解任と福田HCの就任が発表される。横浜の指揮官の途中交代は、Bリーグ誕生以来これで3度目だ。

今シーズンの横浜はメンバーの半数を入れ替え、ディフェンスができる選手を揃えて開幕を迎えた。アーリーカップやプレシーズンゲームで少しずつ成果を見せると、開幕から7試合を4勝3敗で乗り切り、一時は中地区2位に躍りでた。しかし、その後は負けを重ねてしまい、昨年12月11日の川崎戦からウィスマンHCが欠場した15日の試合まで泥沼の11連敗を喫する。

連敗が始まった当初は、ディフェンスで踏ん張ってもオフェンスでリズムを失うことやここ一番の場面でシュートを決められないといった展開だったのだが、天皇杯直前の試合で10連敗を喫した頃にはディフェンスも崩壊してしまう始末だった。当時指揮していたウィスマン前HCも「勝っている状況でもディフェンスが甘くなってオーバータイムで敗れることや、ディフェンス自体もコーチからしてとてもがっかり思っている」とうまくいっていない状況を明かしている。

しかし、福田HCが代行として指揮を始めると、チーム内でも少しずつ変化が起こっていた。1月22日に、同じ神奈川県のチームである川崎にようやくリーグ戦初勝利をあげると、先週対戦した西地区首位の大阪とはGAME1で逆転勝利し、GAME2では敗れたもののオーバータイムまでもつれる大接戦を演じたのだ。その他の試合も接戦で勝ち負けが決まるなど、連敗中は考えられなかった成果を見せている。

バスケットボールBリーグ横浜ビー・コルセアーズ福田将吾ヘッドコーチⒸマンティー・チダ

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「練習の質ははるかに良くなりました」

「今日は勝てたなという感じです」

これはPG#46生原秀将が、2月2日大阪戦GAME2試合後の囲み取材で発した第一声。「点差があいた時のバスケットスタイルや点差を縮められた理由、そういったことが明らかであるにもかかわらず打開することが出来なかった」と勝敗を分けたポイントを明確に捉えていた。文章にするとわかりづらいかもしれないが、生原の声は明るかった。

実は1月5日、SR渋谷に敗れて10連敗を喫した時に生原はこう切り出していた。

「勝ちたかったなという試合ですけど、負けてしまった原因がどこにあるのか、チームとして振り返って練習をやるだけ。(ディフェンスに関しては)原因が何かしらあるはずなので、決して満足をしていることは無いです。リバウンドを取るまでがディフェンスだと全員が認識しないといけない。一人で思うのではなく、全員が思わないといけない」

声のトーンもどこか低く、試合に敗れた原因をこの時点で明確にできているとは言い難い状況で、特に生原が強調していたのが「練習の質」だった。

当時、生原は普段の練習に対する満足度として「20点から30点」と答えていた。「練習の意図やなぜ今この練習をしているのか。ぼんやりしたものをやっているというか、そこには不満を持っています。ただその中で信じてやらないといけないのが選手なので。コーチがやろうとしていることを選手は表現しようとしていて、毎日話し合ったりしてやっているので。練習の質で言うともっと上げたいなと思います」

生原は苦しんでいた。「普段の練習を昔から大事にしていて、逆に中身のない練習はしたくないタイプ。試合においても普段の練習のすべてが物語る」と練習に質を求める姿勢を示す。

10連敗を喫したSR渋谷戦から約1か月間でチームに様々な変化が起こる。体制が変わってチームの状態も少しではあるが、上昇カーブを描ける状況になる。そして、大阪戦GAME1では逆転勝利を収め、2連勝をかけてGAME2に挑んだ。

「大阪が昨日負けたので相当なエナジーを持って試合に入ってくるのは予想できていた。しかし、うちの選手がそれを上回る気迫とエナジーを持って戦ってくれたのが非常に良かった」と福田HCが評価する通り、横浜は開始早々から#00ジェームズ・サザランドの3pを皮切りに得点を重ねていく。生原のドライブから#7レジナルド・ベクトンがするなど、1Qだけで30点を稼いでいた。その後大阪に追い上げを許し、オーバータイムの末に敗れたものの、横浜にとっては収穫のある試合となった。

「大阪がアグレッシブに来るなと思っていたので、それ以上に最初の2,3分だけでもエナジーを出せば、入りがすべて変わるのかなと考えていました。そこはコーチにも言われていましたし、自分も他の4人に伝えるようにしていました」と生原は出だしからスムーズに入った場面を振り返る。

「福田HCが自身の考え方も含めて、自分たちがやるバスケットをある程度明確にしてくれた。それまではオフェンス、ディフェンスともに『これで良いのか』と思いながらプレーをしていた部分があったのですが、それを一つにしてくれたのかなと思います。オフェンスもディフェンスもスムーズにプレーできている。私も納得している」と生原は手応えを掴んでいた。そして、体制が変わったことで、改めて“練習の質”について投げかけてみた。

「もうはるかに良くなりましたね」

生原の声のトーンが一段上がった。「みんなコミュニケーションを取れるようになっているし練習もきついですが、中身のすごく詰まった練習が出来ていると思いますけど、最近は水曜ゲームが続いたので、ここ2週間はできていなかった部分がある。1週間また練習ができるので、そこでまた上げていきたい」と練習が待ち切れない様子だ。

この試合で注目したいのはターンオーバーが“7”だったことだ。ここまで1試合平均12.3回を記録していたが、平均を大きく下回る数字を叩き出した。GAME1も9と一桁に抑える事が出来た。

「ポイントガードの成長がもたらしたもの」と福田HCが話せば、生原も「オフェンスで迷いが無くなってきたし、明確になってきたからだと思う」と自信を持って話してくれた。

「今後はいかにオートマチックなことをどれだけ精度高くやるか」と生原はチームにおけるステップアップの条件を示した。チームはトンネルから脱しつつある。早くトンネルから抜け出すためにも、見えてきた戦術を継続できるのかが重要になりそうだ。

バスケットボールBリーグ横浜ビー・コルセアーズ生原秀将選手Ⓒマンティー・チダ

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