「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

則本昂大がなぜ5年連続奪三振キングに君臨し続けられるのか

2018 12/24 07:00SPAIA編集部
則本,ⒸYoshihiro KOIKE
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸYoshihiro KOIKE

5年連続奪三振王 則本昂大

パ・リーグで187奪三振を挙げ、阪神の江夏豊、近鉄の鈴木啓示(ともに1971年)以来47年ぶりに史上三人目の5年連続奪三振王となった東北楽天イーグルス則本昂大。来シーズンは江夏、鈴木氏の記録、6年連続奪三振王に挑む。

今季の奪三振数は自己最多だった昨年の222奪三振から「35」も少ない。しかし奪三振数は2位に「20」差、奪三振率は規定投球回を満たした投手の数字としてはダントツの9.33を記録しているのだ。

奪三振ランキング,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

脅威の奪三振ショーを続ける則本のピッチングにはどのような傾向があるのだろうか。

ボールゾーンの奪三振数が飛び抜けていい

低めのゾーン別成績,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

上の表は低めのコースの奪三振数をストライクゾーン、ボールゾーンに分けてまとめたものである。則本は低めのストライクゾーンでの奪三振数はそこまで特徴的ではないが、ボールゾーンの奪三振数が飛び抜けて多いというのが見て取れる。

低めのボールゾーンで三振を奪うには、ストライクゾーンとボールゾーンのギリギリに投げ込むコントロールやキレが必要である。その上、ワンバウンドで勝負する場合もホームベース手前で落とせば打者は振ってくれないので、ホームベース上に落とす精度が求められる。コースとボールの変化する位置、この2つを高い精度でコントロールできるのが則本なのだ。

則本の決め球は他の投手より一つ多い

ボールの質という点では以下の表も参考になる。

真ん中高めの奪三振,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

ストライクゾーンの真ん中の高さに投げた時の奪三振数をまとめたものである。この高さは、打者からは見やすく打ちやすいので、三振を奪いにくいコースである。ここで三振を奪うには、両サイドのギリギリに投げ込むコントロールと当てさせないキレのある変化球を持っていなければならない。則本はここでも40個以上の三振を奪っており、やはり高いコントロール能力がうかがえる。

決め球が3つある

ここまでは、コース別データで則本投手の奪三振の傾向を見てきた。ここからは、球種による特徴を見ていく。

こちらの表を見ていただこう。

球種別奪三振数,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

上の表は前述した投手の球種の中で、50個以上の三振を奪った球種をまとめたものである。いわば決め球と言われるボールだ。まず、ひと目で分かるのは、他の投手が1、2種類の球種に対し、則本は勝負できる球が3つあるということだ。

打者にとっては警戒すべき球種が多ければ、狙いを絞りにくくなり対応しづらい。これも、三振を奪いやすい要因だろう。

注目すべきはスライダー、フォークで120個もの三振を奪っていること。変化球というポイントに絞ってみると、千賀投手のお化けフォーク、メジャー挑戦の菊池投手のスライダーが多くの三振を奪っているが、則本はその両方を持ち合わせているかのような成績である。

フォークのレベルはトップクラス

最後に、高レベルのストレート、スライダー、フォークをどう使っているのか見ていこう。

球種別成績,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

上記は則本投手の決め球の空振り率と見逃し率をまとめたものである。1つずつ見ていくと、ストレートは見逃しでカウントを整えたり、三振を奪ったりするのに有効に使われている。

スライダーは空振り率、見逃し率ともに高い。スライダーは狙われると打たれやすい球種でもあるが、的を絞らせない投球をすることで、スライダーの威力を最大限に引き出しているようだ。

最後にフォーク。これは圧倒的に空振りが多い。この数字が低めのボールゾーンで三振を多く奪える理由だ。奪三振率を見るとフォークを得意としている千賀投手(25.8%)と比べても遜色なく、タイミング、質ともに高レベルなフォークを投げ込んでいるのが分かる。

来年も多くの三振を奪い、見るものを興奮させてくれることだろう。また、来シーズンは三振だけでなく勝ち星、防御率でも数字を残しチームの優勝に貢献したいところである。