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リスクも大きい秋山翔吾らセンターラインのフルイニング出場 バックアップの成長は不可欠

2018 11/25 07:00青木スラッガー
秋山翔吾,埼玉西武ライオンズ,ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

西武・秋山ら3人がフルイニング出場継続中

今シーズン達成された偉業のひとつに、西武・秋山翔吾の「536試合連続フルイニング出場」がある。これは、ロッテ・愛甲猛の535試合を更新するパ・リーグ記録であった。また、昨シーズンの新人開幕戦から221試合連続フルイニング出場を果たした2年目の源田壮亮も、長嶋茂雄が持っていたプロ野球記録を更新した。

それぞれがシーズン終了まで休まず出場を続け、秋山は4年連続、源田は新人から2年連続のフルイニング出場を達成。セ・リーグでも広島・田中広輔が3年連続のフルイニング出場と、「センターラインが固まっているチームは強い」という野球の常識を、改めて感じさせられたシーズンだった。

秋山は中堅手、源田と田中は遊撃手として今シーズンのゴールデングラブ賞に選出されており、いずれも名手に数えられるプレーヤーである。その上、打線においても1・2番を務める攻撃の中心選手。攻守両面で負担の大きい役割を1イニングも休まず全うし、成績もしっかり残した3人のチームへの貢献度は計り知れない。

その一方で、走力や肩を必要とするため負担が大きく、守れる選手が限られるセンターラインだからこそ、3人の連続フルイニング出場には少し考えさせられるところがある。

センターラインの選手がフルイニング出場を継続することのリスク

「休まない」ということは、当然そこにはパフォーマンスの低下や、疲労の蓄積による故障のリスクが潜んでいる。

今シーズンでいえば、西武の外崎修汰も右翼手・三塁手とポジションを移りながら、昨シーズン途中からフルイニング出場を続けていた。だが、9月1日のオリックス戦を終えたところで左脇腹を痛め、約1か月間の欠場を余儀なくされ、優勝争いの一番大事な時期に戦列を離れることとなってしまった。体に無理がきていたなら、どこかでリフレッシュした方がよかったのではと考えずにはいられない。

外崎が離脱するまで守っていた右翼は、経験がある金子侑司や木村文紀がカバーすることで事なきを得た。しかし、複数年連続でフルイニング出場している場合は、そう簡単に穴埋めすることはできないだろう。西武の中堅手は4年、遊撃手は2年、広島の遊撃手は3年、一軍では他の選手が守っていない。

誰かがフルイニング出場するということは、そのポジションのバックアップメンバーが一軍で経験を積むことができない。それが守備の要であるセンターラインとなると、守りにおいてチームの大きなリスクとなってしまう。

現状、秋山・源田・田中の替わりはいない。もし彼らを休ませるなら、中堅手、遊撃手は誰が守るのだ?といった話になる。しかし、その問いが出てきてしまうこと自体、危うい状況といえるのではないだろうか。

バックアップメンバーの成長がチームに不可欠

連続フルイニング出場を継続しているセンターラインの3人は、あくまで記録ありきではなく、実力でポジションを守っている。ならば「競争」とまではいわずとも、彼らのパフォーマンスが落ちてきたときに「起用してみたい」と首脳陣に思わせるだけの実力を持った選手が、もう一段階チームを底上げしてくれるはず。

7月下旬、広島は三塁手をメインに守る美間優槻を出し、二遊間を守れる曽根海成をソフトバンクからトレード獲得した。これも田中のバックアップ要員に不安があったことからだろう。

田中がポジションを奪うまでは、梵英心が長く不動のレギュラーに君臨していたこともあり、一軍で遊撃手を待った経験のある選手は少ない。曽根は広島移籍後、プロ4年目でさっそく初ヒットとタイムリーを達成。また、日本シリーズにも出場し存在感を示した。今後一軍の戦力として、大いに楽しみなプレーヤーだ。その他にも、4球団競合のゴールデンルーキー小園海斗もいる。彼が早い段階で遊撃手として出てきてくれれば、言うことはないだろう。

西武の遊撃手は名手・永江恭平の打撃成長や、呉念庭の守備力向上が鍵となる。ドラフト3位の社会人内野手・山野辺翔も、遊撃手として期待されている。秋山が来シーズンオフのメジャー挑戦へ興味をみせているため、嫌でも後継者を育てなくてはならない中堅手。二軍では3年目の愛斗、2年目の鈴木将平といった外野手が経験を積んでおり、そろそろ本格的な一軍定着が待望される。

今シーズン、タフな働きでリーグ優勝に大貢献した秋山、源田、田中。フルイニング出場に耐えうる彼らの能力は、特別な才能だ。だが一方で、これから日本一を目指すためには、さらに良いパフォーマンスを発揮しなければならない両チーム。バックアップメンバーが経験を積み成長することは、大きなポイントになるのではないだろうか。