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2017年キャンプ・オープン戦総評【セ・リーグAクラス編】

2017 5/17 09:55Mimu
>バッターⒸShutterstock.com
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【広島カープ】セリーグ2連覇に向けて投手の補強が急務

開幕に向けて、どの球団も徐々に選手たちが調子を上げつつあります。そんな中、各球団はどのようなキャンプ、そしてオープン戦を行ってきたのでしょうか。今回は12球団のうち、2016年でセリーグのAクラスだった3チームの様子を紹介しましょう。

まずは前年セリーグを制覇した広島東洋カープから。カープはやはり投手陣の補強が急務ですよね。昨シーズンが限りで黒田博樹さんが引退したこともあり、これで2015年の前田健太選手に続き、2年連続でエース級の投手がチームから去ってしまいました。ドラフトでは指名した6人のうち、5人が投手というところからもわかるように、その穴を埋めることこそが2連覇に向けての鍵となるのです。

【広島東洋カープ】あの名スカウトも注目!?ドラ1位ルーキー加藤拓也

では、今キャンプではどんなピッチャーがアピールをしていたのでしょうか。やはり注目は、ドラフト1位で入団した加藤拓也(かとうたくや)選手です。慶應義塾大学からプロの世界に飛び込んだ右腕は、キャンプ中も連日アピールを続けました。
初めて登板したフリー打撃では、田中広輔(たなかこうすけ)選手、菊池涼介(きくちりょうすけ)選手、鈴木誠也(すずきせいや)選手を相手という厳しい状況の中、ボール球を振ってもらえないというプロの洗礼を浴びてしまいましたが、それでも田中広輔選手からは変化球を褒めてもらったりなど、チーム内でもその評価が高まりつつあります。

実は彼を高く評価していた苑田聡彦(そのだとしひこ)さんは、専修大学時代の黒田博樹さんをスカウトした人物でもあります。そんな人が良い選手だとおっしゃるのですから、やはり注目せざるを得ませんよね。練習試合やオープン戦といった実戦ではフォアボールが多く、まだまだ課題は残りますが、それでも期待したくなる何かのある選手です。

【広島東洋カープ】鯉のプリンス復活なるか!?背水の覚悟で挑む

野手では菊池選手、田中選手がWBCへ招集される中、復活を期して今シーズンに挑む堂林翔太(どうばやししょうた)選手に注目が集まります。2012年にはチームトップの14本塁打を放つも、その後は徐々に出場試合数が減っていき、2016年はチーム優勝の輪に加わることができませんでした。
サードのポジションにはエクトル・ルナ選手や安部友裕(あべともひろ)選手が定着。ライトで勝負しようにも、鈴木誠也選手がリーグトップクラスの成績を残し、付け込む隙がなかったのです。

ですが、2017年シーズンに向けて新井貴浩(あらいたかひろ)選手に弟子入りすると、新井選手が毎年行っているに護摩行に同行。顔中にやけどを負いながらも、最後までやり遂げました。肉体的にも精神的にも自分を追い込み、2017年のシーズンに挑みます。
昨シーズン終盤から右方向への打球に力強さが増し、キャンプ中の練習試合でも右中間にホームランを放ちました。守備も年々上達しています。あとは、試合の中でそれを出しきるのみです。

【読売ジャイアンツ】FAで数多くの選手を補強も……

続いては2016年セリーグ2位、読売ジャイアンツのキャンプを紹介していきましょう。前年の雪辱を晴らすべく、なんとFAで3人もの選手を補強しました。横浜DeNAベイスターズから山口俊(やまぐちしゅん)選手を、福岡ソフトバンクホークスから森福允彦(もりふくまさひこ)選手、日本ハムファイターズから陽岱鋼(ようだいかん)選手を獲得したのです。
さらにトレードでは2012年のMVP、吉川光夫(よしかわみつお)選手も獲得。新外国人として、2013年に東北楽天ゴールデンイーグルスの日本一に貢献したケーシー・マギー選手も入団しました。それだけ、本気で優勝を奪いに来ているということです。

ですが、キャンプでは彼らの名前はあまり耳にしませんでした。山口選手、陽岱鋼選手はともにケガをして3軍で調整中。森福選手は順調なものの、吉川選手も実戦で失点する姿が目立っています。むしろ田口麗斗(たぐちかずと)選手や重信慎之介(しげのぶしんのすけ)選手といった若手選手の方が目立っていたくらいです。
さらに、オープン戦ではチーム全体が不調に陥っています。打撃陣は3月11日のオリックス戦、12日の阪神戦で2日連続の1安打負け。投手陣も内海哲也(うつみてつや)選手や山口鉄也(やまぐちてつや)といった実績のある選手が打ち込まれるシーンが目立っており、開幕に向けて不安が募ります。

【読売ジャイアンツ】侍の正捕手はチームの救世主となるか

そんな中、巨人の選手でもっとも話題になっているのは、WBCに参加した小林誠司(こばやしせいじ)選手ですね。2013年のドラフト1位で入団した選手で、球界でも屈指の強肩を誇り、阿部慎之助選手の後釜として期待されていました。
しかし、やはり前任者の存在が大きすぎたのか、関係者やファンからは厳しい意見を浴びせられることも多く、今回日本代表に選出された際も疑問の声が上がっていたほどだった選手なのですが……。

しかし、ふたを開けてみれば侍ジャパンの正捕手を務め、キューバ戦では2安打1打点、中国戦ではホームランも放っています。守備面でも好リードを見せており、特にオーストラリア戦でストライクが入らない岡田俊哉(おかだとしや)選手(中日)に絶妙のタイミングで声をかけ、見事ピンチを切り抜けるというシーンも印象的でした。
第2ラウンドでも3試合すべてで安打・打点を記録、準決勝のアメリカ戦でも1安打を放っており、チームに欠かせない存在となったのです。はたして彼は苦しむ巨人の救世主となることができるでしょうか。シーズンに入ってからも注目ですね。

【横浜DeNAベイスターズ】ルーキーがチームの起爆剤となるか

続いては初のクライマックスシリーズ進出となった3位の横浜DeNAベイスターズのキャンプ・オープン戦を紹介しましょう。昨シーズンは多くの若手野手がレギュラーに定着しました。投手陣では山口俊選手がFAで移籍も、それ以外に目立った戦力ダウンはありません。
強いていうなら選手同士でよりレベルの高い競争ができるかというかというところが課題になるしょうか。新人選手の中にも、レギュラー組を脅かす選手が続々と出てきています。

やはり注目はルーキーの佐野恵太(さのけいた)選手です。2016年のドラフトでは9位指名というかなりの下位指名だった選手が、ここまでキャンプ・オープン戦と非常に良い結果を残しているのです。
広島の広陵高校から明治大学を経てベイスターズに入団。叔父に佐々木誠氏(現ソフトバンク3軍監督)を持つ、長打が魅力の一塁手です。このキャンプではフリーバッティングで特大のホームランを披露し、オープン戦でもホームランを放っています。大学時代はほとんどがファーストでの出場だったため9巡目まで残っていたのですが、これは大きな掘り出し物かもしれません。
ファーストにはアニモ・ロペス選手が、そしてオープン戦で主に守っているレフトにも筒香選手がいます。レギュラー獲得の道のりは簡単なものではありませんが、彼らに危機感を持たせるには十分すぎる打棒です。

【横浜DeNAベイスターズ】ドラフト6位の投手も高評価!

投手に注目すると、尾仲祐哉(おなかゆうや)の評価が高かったようです。もちろんドラフト1位で入団した濱口遥大選手も注目なのですが、尾仲選手はドラフト6位にも関わらず、それと同じくらいの注目を集めているのです。
広島経済大学(ホークスの柳田選手の出身校)出身で、150キロを越えるストレートが売りの選手といいます。ですが、本当にこの選手の強みとなるのは、自分で考えてトレーニングできるという点ではないでしょうか。

高校時代は最速130キロそこそこ。大学に入学後も周りにすごい選手がいる中で自身を失いかけ手いたこともあったそうなのですが、独自に筋トレを行ったり映像を見てフォームを研究したりなど、自分で考えて地道に努力をした結果、球速は150キロを記録するほどまでに成長したのです。
以降大学では絶対的なエースとして活躍しました。オープン戦では初先発で4回4失点と苦しみましたが、彼ならきっとこの課題をクリアして、さらにレベルの高い投手になってくれるはずです。

ここまで2016年度セリーグAクラスだった3球団のキャンプを見てきましたが、復活にかける選手がいるカープ、全体的に低調になってしまったジャイアンツ、期待の新人が現れたベイスターズ、三者三様みたいですね。はたして、シーズンが終わった後に頂点に立っているのはどのチームなのでしょうか。