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高校野球界を震撼させた伝説の投手5人

2016 10/28 03:11
野球ボール,ⒸShutterstock.com
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Photo by Evgenii Matrosov/Shutterstock.com

高校野球界を震撼させた投手たち5人を紹介したいと思う。マウンド上で圧倒的な実力を誇りながらも、高校球児らしくハツラツとしたプレーを見せてくれた選手たちにスポットを当てる。

【1】作新学院・江川卓

メディアから「怪物」という異名を与えられた最初の高校球児かもしれない。栃木県予選では高校3年間で、2回の完全試合と9回のノーヒットノーランを達成。本当に「誰にも打たせない」投手だった。決して強力打線を有しているわけではない当時の作新学院は、点を取られないしそもそも誰にも打たれない江川がいるからこそ、全国常連校であったのかもしれない。
最強と呼ばれたのは高校2年の夏。県予選で3試合連続ノーヒットノーランを達成(内1試合は完全試合)。小山高校と対戦した準決勝も10回2アウトまで無失点、最後にスクイズから失点を許す「ほぼパーフェクト」だったのだ。甲子園の舞台に立ったのは3回だが、その後もジャイアンツで活躍し、野球界が誇る名投手になった。

【2】横浜・松坂大輔

江川卓に次ぐ「怪物」が、横浜・松坂大輔。史上2人目となる選手権決勝ノーヒットノーランを達成したほか、「平成の怪物」とも呼ばれ、同年代の高校球児を「松坂世代」という言葉でひとくくりにできるほどの活躍を見せた。
その活躍の集大成とも言えるのが、1998年の夏の大会。準々決勝でPL学園を相手に延長17回を投げ抜き勝利をもぎ取ると、続く準決勝の明徳義塾戦では前の試合で250球を投げた疲労を考慮して外野手として出場したが、代役投手が打ち込まれて6点のビハインドを背負う苦しい展開。
しかし、打線が8回裏に猛追を見せて2点差に迫ると、9回表に松坂がマウンドに上がり無失点で切り抜け、その裏にチームは同点さらに逆転しサヨナラ勝ちを収めるのだ。休養十分で挑んだ京都成章との決勝戦は、盤石のピッチングを見せてなんとノーヒットノーランを達成。壮絶なラスト3試合を勝ち抜いて栄冠を手にしたのだ。
プロ入り後もライオンズ、メジャーリーグで活躍。現在は福岡ソフトバンクホークスに所属している。

【3】PL学園・桑田真澄

「KKコンビ」で名を馳せた、1980年代に訪れたPL学園の黄金期を3年間にわたり支えた大エース。1年生の頃は背番号11ながらも実質エースとして夏の甲子園で活躍。やまびこ打線を誇る池田(徳島)を完封するなどセンセーショナルな戦いを披露した。決勝でも相手を寄せ付けず早くも全国制覇を達成する。2年生時の春の選抜大会決勝で敗れるまで「甲子園20連勝」という前人未踏の大記録を打ち立てる原動力となった。
高校3年間で春夏合わせて5度の甲子園を経験、通算20勝を挙げた投手は歴史上桑田真澄ただ1人。プロ入り後はジャイアンツ一筋で投げ抜き、往年は夢だったメジャーリーグにも挑戦した。独特のピッチャー哲学を持ち、いまもファンが絶えない野球人の一人だ。

【4】駒大苫小牧・田中将大

北海道に初めて優勝旗を持って帰り、57年ぶりとなる夏の甲子園連覇を達成した2000年代の駒大苫小牧。当時の主力投手が、現在ニューヨーク・ヤンキースで活躍する田中将大投手だ。打者を三振に仕留めた時の雄たけびは、チームメイトだけでなく観客をも熱くした。
早稲田実・斎藤佑樹との延長再試合を含めた合計24イニングに及ぶ投手戦は、平成の名勝負のひとつ。奇しくも斎藤投手率いる早稲田実に優勝を譲ってしまう形にはなったが、3年間で甲子園通算14勝は立派なもの。現役最強投手の一人に名を連ねている。

【5】興南・島袋洋奨

最も記憶に新しいのが、2010年に春夏連覇を達成した興南(沖縄)の島袋洋奨投手だ。トルネード投法を武器に、高校1年の夏からベンチ入り。2年生の時に春夏それぞれ1試合でマウンドに立った(いずれも敗戦)。高校2年時の春の選抜では、同校史上初となる全国制覇を達成。5試合で46イニングを投げたその防御率は1.17と盤石そのものだった。
最後の夏も沖縄県予選を勝ち抜き甲子園に帰ってきた島袋投手。チームを引っ張る正真正銘のエースとしてマウンドに立ち続ける。着実に勝利を重ねて決勝に進出すると、強力打線を誇った東海大相模をわずか1失点に抑える好投を見せて、沖縄県勢初となる春夏連覇を達成したのだ。卒業後は中央大学に進学し、現在は福岡ソフトバンクホークスに所属している。

まとめ

名投手がいるチームが頂点にたどり着くことが多い高校野球。「甲子園には魔物が住む」とよく言うが、マウンドに立つピッチャーはその魔物に真っ向勝負を挑まなければならない。本稿で紹介した5人には類まれな才能だけでなく、たゆまぬ努力を経て得た実力を備えていた。彼らに続くこれからの高校野球界のピッチャーに、注目していきたい。