地元の多田、目指すは9秒8台
昨年、彗星のごとく現れ、日本のトップへの仲間入りを果たした多田修平。そのきっかけとなったのが、昨年のゴールデングランプリだった。
得意のスタートで飛び出し、五輪金メダリストでもあるジャスティン・ガトリン(米国)に、70メートル付近までリードした。最終的には3位に終わったが、陸上ファンに「あの選手は誰だ」と思わせるほどのインパクトのある走りだった。
多田も昨年を振り返り、ゴールデングランプリがターニングポイントだったと語る。「予想外のことが起きて、そこから調子が上がっていった」
その後、日本学生個人選手権では追い風4.5メートルの参考記録ながら、9秒94をマーク。日本人初の9秒台争いに名乗りを上げた。
日本選手権では2位に入り、世界選手権の代表に。世界選手権でも100メートルで準決勝進出、400メートルリレーでは1走として銅メダル獲得に貢献。飛躍の1年だった。
だが、悔しい思いもしている。9月9日の日本学生対校選手権。100メートルの決勝で10秒07の自己ベストをマークしたが、一緒に走った桐生が9秒台をマークした。その快挙を後ろから見ることになってしまった。
「本当に悔しかった。ただ、その後も頑張れるきっかけになった試合だった」
冬季は二つの点を強化した。一つはスタートの技術の改善。周りから見ると、スタートが得意のように見えるが、多田自身はそうは思っていないようだ。
もう一つは、お尻周りとハムストリングスという、スプリンターに必要な筋肉の強化だ。多田というと、細身のイメージがあるが、今年は体が一回り大きくなった。
だからこそ、今季の目標は高い。
「9秒8台を狙っていきたいし、最低でも日本記録を更新したい。筋力もついて、自信がある」
今季はタイムこそ出ていないものの、関西学生対校選手権では、男子100メートルで55年ぶりとなる大会4連覇を果たした。上り調子で地元での大会に挑む。